研究概要 |
当該年度においては,主に鈍頭物体周りの弧状衝撃波不安定性について三次元数値流体計算を用いた解析を行うことによって,メカニズムの解明を試みた.それに先立ち,強い衝撃波を伴う数値流体計算において以前よりその存在が指摘されている,カーバンクル現象と呼ばれる数値不安定性を排除するために,非構造格子においても高精度の数値計算を実現可能な不連続ガレルキン法を用いて,数値流束スキームや鈍頭形状,計算格子に対する不安定性発展の依存性を調べた.数値流束スキームの比較の結果,比較的数値不安定性に強いスキームの中でも,嶋らの提案したSLAUスキームが鈍頭物体周りの衝撃波解析に適していることを確かめた.また,物体表面形状がより鈍頭なほど不安定性が発現しやすいことがわかった.さらに,物体表面が平坦に近い場合には,SLAUを用いた場合でも不安定性成長を確認することができた.この不安定性の原因を特定するため,スペクトル解析によって特徴的な擾乱波長が何に依存するかを調べたが,ほとんどの場合,計算格子に依存した波長が成長していることがわかった.そのため,さまざまな計算格子を用意したところ,鈍頭形状が非常に平坦であっても定常な流れ場を得ることができ,単純な鈍頭形状では不安定性を誘起することが困難であることがわかった.実際,衝撃層内の亜音速領域では,音波が介在する不安定性発展が起きにくい状況である.したがって,弧状衝撃波不安定性の発展には鈍頭形状以外の要因が不可欠であるという,不安定性のメカニズム解明に向けた重要な知見が得られた.
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