研究課題
本研究では、細動脈における血流の微小循環メカニズム、つまり血球と周囲流体の相互作用の解明を目指して、血球を模擬したマイクロビーズを作成し、その挙動を再現性良く定量的に計測することを目的としている。今年度は「再現性を確保したビーズの生成と流動条件の確立」を目標としており、具体的な開発項目に分けて研究を進め、以下の成果を得た。1.ビーズ材料の選定と生成装置の開発紫外線硬化樹脂で満たしたマイクロ流路にマイクロパターンを転写したマスクを通して紫外線を照射することにより、自由な形状のビーズを均一に作る「パターン露光法」の確立を目指して開発を行った。ビーズ材料となる樹脂としてポリエチレングリコール・ジアクリレートを採用し、また、顕微鏡対物レンズ直前に設置できる円形マスクを作成した。落射光学系よりLED-UV光源を照射したところ、マスクのパターンを転写した円盤型のビーズ生成に成功した。2.パラメータ設定と生成メカニズムの解明パターン露光法では、露光時間や光源の集光度合いなどのパラメータがビーズ形状を決定するため、再現性の良いビーズを生成するためにこれら光学的条件を調整する必要がある。特に対物レンズ倍率によって光源の絞り角が異なるため、何種類かのレンズを用いて生成したビーズの3次元形状を解像度の高い共焦点顕微鏡で測定して、生成条件の検討を行なった。3.様々な形状、特性を持つビーズの開発ビーズ材料の樹脂は水溶性のため、硬化前にPIV計測用の蛍光トレーサ粒子を分散させておくことにより、内部にトレーサを含んだビーズの生成に成功した。これをPIV計測に用いる事で、ビーズの回転挙動などを捉える事ができる。また、樹脂は水で薄める事で硬化後の硬さを変化させることができるため、硬さの違いによる挙動の評価や、より血球に近い実験を行うことができる。4.ビーズの流れる位置を再現性良くコントロールできる流路デザインの開発パターン露光法において、UV光源を落射で照射しながら、ダイクロイックミラーで分光した画像をカメラで捉える事により、ビーズの出現位置を確認することができた。画像で流路を確認しながらピクセル単位で位置合わせを行うことができるため、下流計測域でのビーズ位置制御が可能になると考えられる。また、流路近傍に光ファイバを挿入してビーズの通過を検出する機構を開発し、再現性の良い計測を可能とした。5.ビーズ生成と位置制御、観察機能のワンチップ化ワンチップ化にはビーズ生成領域と流動観察領域が別々かつ近接していることが望ましいが、光学系の物理的干渉を避けるためそれぞれの光学系を流路チップに対して対向する配置を試みている。
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可視化情報学会論文集 Vol.29 Suppl.No.2
ページ: 241-242
Proceedings of The 13th International Conference on Miniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences(microTAS 2009)
ページ: 749-751