研究概要 |
粘弾性皮膜部分の二次元物理モデルに関して,既存のモデルでは膜の伸縮によって蓄えられる弾性エネルギのみを考慮していたが,表面積変化や体積変化も考慮した全弾性エネルギを導入し,各質点に作用する弾性力を仮想仕事の原理によって求める形に改良した.また,赤血球のような粘弾性皮構造を有する物体の運動を解析するために,本手法を三次元モデルに拡張しプログラムの構築を行った.さらに,その物理モデルを二相系格子ボルツマン法(以下LBMと呼ぶ)に組み込んだ.得られた手法の妥当性を確認するために,チャネル内における単純せん断流れの計算を行い他の研究例と比較した結果,良好な結果が得られた.このことから,導入した膜の物理モデルの有効性とマイクロスケールの混相流問題への本手法の有効性が示された. 次に,変形やせん断ひずみを考慮に入れた粘弾性体に対して,種々の形状(例えば球,楕円体,双凹面形状など)の物理モデルを構築し,それらを二相系LBMと融合させた.また,固液混相流解析に必要な境界条件についての検討も行った.これらの基礎的な検討は,毛細血管に代表されるようなマイクロスケールの複雑な流路をもつ三次元解析にとって非常に有意義な内容の研究であり,重要性はきわめて高い. 最後に,上記で開発された三次元計算のためのプログラムを並列計算用コードに改良した.しかしながら,最適なパラメータチューニングについてはまだ不十分であり,これについては平成22年度の課題としたい. 以上のことから,平成21年度に実施された研究成果により,最終目標である赤血球を含む毛細血管内流れの混相流シミュレーションへの基礎が確立されたと言える.
|