研究概要 |
微粒子が着水する際には粒子表面の接触線運動が粒子の運動に極めて大きな影響を与える.着水時には接触線速度は時間的に大きく変化するため,その過渡性に関する検討の必要性が高まっている.本年度は分子動力学を用いた微視的接触角に関する検討と,可視化実験による巨視的接触角における過渡性の影響についての検討を行った. 分子動力学を用いた解析では,非混合二流体が互いに逆方向に動く平行平板間に挟まれた体系で行った.計算は予め平板が運動しない状態で平衡状態を維持し,その後に平板にステップ状の速度変化(0m/s→20m/s)を与えることで行った.その結果,平板が運動した直後の100psの間の接触角と接触線速度の関係は,定常時に得られる両者の関係から大きくずれることがわかった.このことは微視的接触角においても過渡性を考慮したモデル化が必要であることを示している. また,このような接触線速度の過渡的変化が接触角に与える影響について,巨視的な体系(ミリメータスケール)にて実験的に測定を行った.実験は鉛直に設置した直径2mmのガラス円柱を0.2mm/sの下降速度でエチレングリコールに浸入させ,その際のメニスカスの形成時における接触角および接触線速度の過渡変化を観察することで行った.接触線は円柱の着液後10ms程度の間に円柱表面を上昇し,定常に至った.その際の動的接触角と接触線移動速度の関係を調べた結果,特に着液直後については,接触角が接触線速度では一意に定まらない期間が見られた.この原因を明らかにするため,定常時における動的接触角と接触線速度の関係を用いて評価した接触角と,測定された接触角の偏差の時間変化を求めた.その結果,偏差の挙動は加速度の変動とほぼ同じものであることがわかった,このことは接触線の加速度が接触角に大きな影響を及ぼしていることを示している.
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