研究概要 |
本研究の目的は,円形噴流・平面噴流などに代表される空間発達自由剪断乱流場において,乱流モデルに欠かせない概念の一つであるスケール不変性の適用限界を明らかにすることにある.この性質は,実用上重要な高レイノルズ数乱流の摩擦抵抗・乱流混合の予測精度の向上のために非常に重要である.この目的のため,本年度は,空間発達流の直接数値解析コードの作成,ポアソン方程式高速解法の導入,高次精度差分スキームの導入,そして高レイノルズ数の解析を視野に入れた解析コードの並列化などを実施する計画であった. 当該年度の研究の成果として,上記計画内容の中で高次精度差分スキームの導入以外は達成した.まず,流体の運動方程式の数値解析の有名なボトルネックであるポアソン方程式の解法に,計画調書にも記したFFTと非定常反復解法を組み合わせた手法を用い,簡便な定常反復解法の場合と比べて10倍~100倍の高速化を達成した.また,解析コード全体に並列化を施すことで,近年マルチコア化の進むサーバ用CPUを有効に利用し,全体として高速に解が得られるようになった. 今後は,高次精度差分スキームの導入を引き続き行い,解析結果の妥当性を保証するために,噴流数値解析における適切な境界条件の精査,噴流初期領域の渦構造から自己保存領域の乱流統計量までの過去の文献との比較,そして自由剪断流の乱流境界層理論解との比較検証を行う.最後に,得られたデータベース若しくは瞬時三次元の速度データより,本研究の目的でもある空間発達自由剪断乱流におけるスケール不変性の検討を行う.
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