本研究では、強安定成層流中における熱・運動量輸送に及ぼす浮力効果を明らかにすることを目的として、デジタル熱流体計測器の開発および評価実験を行った。従来のアナログ計測器では困難であった、物性値の温度依存性を考慮したより厳密な補償演算を実装するために、FPGA(Field Programmable Gate Array)を採用したことが特徴である。本年度は、昨年度に構築した温度計測部と速度計測部の各デジタル補償系を統合した。速度計測に対する温度補償系の検定実験は、流速U=3.0m/sの気流に対して△〓=0~60Kまで気流を段階的に加熱することで実施した。熱電対の平均温度に基づく補償系ではなく、抵抗線温度計の瞬時温度情報に基づく動的な補償系を新たに構築した。従来よりも厳密な補償演算が可能となった結果、昨年度より幅広い△〓=0~60Kの温度範囲において誤差±1.6%以内で加熱気流の流速情報が取得可能となった。 また、温度流速計では、温度・速度センサ間に生じる空間的な隔たりが空間分解能の劣化や温度・速度の相関量の計測時に誤差の原因となる。そこで、温度流速計では温度信号を一定時間遅延させ、空間的差異を時間的差異に置き換えて相殺する遅延補償系が必要となる。遅延補償系をFPGA上へ構築し、流速U=1.0~5.0m/sに相当する電圧を印加して静特性評価実験を実施した。その結果、目標遅延時間に対する遅延時間の誤差が±1.0%以内で的確な補償を行う遅延補償系を実現した。 遅延補償系の適用流速範囲に課題が残るものの、強安定成層流中における乱流生成や乱流輸送を解明するために必要な温度・速度変動及び相関量を計測することの可能なデジタル二線式温度流速計が構築された。
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