研究概要 |
PEFCにおける水管理は長期安定運転や性能向上の実現においては極めて重要な課題であり,申請者は付加装置の不要な生成水自己管理型セパレータを開発することを目的としている.本申請研究では,集電性能を犠牲にしない通常の電池(非可視化用)を用いて,電池内部の様子をボアスコープにより観察し,セパレータ内部の生成水挙動を把握し,より良い性能をもつ生成水自己管理型セパレータを実現しようとするものである.本年度は,前年度に実施できた実電池内部の直接可視化による実験結果を踏まえて,これまで可視化用セパレータに適用してきた吸水・排水を促す金属多孔質体である吸排水層(WAL)をステンレスセパレータに適用した.その結果,可視化用セパレータでの結果と比較して,金属セパレータの性能は大幅に改善し,不安定な電圧変動が大幅に減ることがわかった.しかし,通常の基準電池性能と比較すると,生成水量が増える高負荷時において急峻な電圧降下の頻度が減るなどのメリットが得られているものの,出力電圧値はやや低い結果となった.WALがポーラス状のステンレス製であることから,WALが吸水した際のMEAとの接触抵抗の低減が課題であることがわかった.また,スタック時には,WALをセパレータとMEAとの間に適切に配置する際に手間がかかることもコスト面での問題であり,今後,生成水自己管理型セパレータを実現するには,WALをセパレータ内に設置するよりも,WALの素材そのものにガス流路パターンの加工し,それによって,セパレータそのもので生成水を管理する方法が適当であり,金属粉末射出成型法(MIM法)を用いることでそれが実現できそうであることがわかった.
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