固体高分子形燃料電池において、複雑な電池構造内の三次元解析を可能とすることにより二相流動挙動を明らかにするとともに、最適な電池構造の提案までを目指し、コードの大規模・高速化を行なった。得られた主な成果を以下にまとめる。 1.数百万程度の格子点の解析を行えるよう解析コードの並列化と計算環境の整備を行なった。まず、より大規模な計算を可能とするためにコードの並列化を行なった。また、PCクラスタシステムを増設し、並列化環境の整備を行なった。また、本解析法は高密度比の二相流に対して連続性を保障するため、圧力のポアソン方程式を解く必要があり、この部分に計算時間の約半分を要する。そこで、ポアソン方程式の線形行列解法に対して共役勾配法を導入し、高速解法手法を確立し、その有効性を確認した。 2.複雑な繊維構造であるガス拡散層、および金属多孔体セパレータに対し、実際の構造データから格子ボルツマンコードで解析可能なデータ形式への変換までを行うスキームを確立した。ガス拡散層の構造と特性解析に特化して研究をされている九州大学井上元先生にご提供いただいた模擬ガス拡散層の構造データ、および某研究所からご提供いただいたX線CT撮影による多孔体セパレータの構造データをそれぞれ用い、その有効性を確認した。 3.大規模・高速化コード、および多孔体構造モデルを用い、電池内の三次元二相流動解析の予備解析を行い、特に角部の取り扱いや、流入境界条件などの三次元化において、問題なく計算が可能なように三次元コードを発展させた。
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