固体高分子形燃料電池において、複雑な電池構造内の三次元解析を可能とすることにより二相流動挙動を明らかにするとともに、最適な電池構造の提案までを目指し、格子ボルツマン解析コードの大規模・高速化を行なった。さらに本コードを用い、ガス拡散層内の二相流動解析を行った。得られた主な成果を以下にまとめる。 1.格子ボルツマン解析で濡れ性を表現するにあたり、時間ステップごとに固体表面の流体の状態(気体、液体、または界面)を参照し、適切に境界条件を与える必要がある。この方法について、複雑多孔体構造である三次元のガス拡散層にも適用できる境界条件設定方法を確立し、昨年度開発した模擬ガス拡散層の構造内でも問題なく計算が可能となるように三次元コードを発展させた。 2.濡れ性の異なる二つのガス拡散層内で三次元凝縮水流動解析を行い、親水性の場合は繊維方向に水が広がりガス拡散層内に滞留する傾向が強くなり、疎水性の場合は繊維方向ではなくより大きな空孔を選択しながら流入方向に進出する傾向が強くなることを示した。これより、疎水性ガス拡散層の水排出性の良さを本解析で評価することが可能であり、本コードが電池設計に有効であることを示した。 3.ガス拡散層に隣接する流路型セパレータの濡れ性の影響について解析を行った。リブが親水性の場合は、リブに接触した水が吸い上げられてチャネルへそのまま排出され、疎水性リブよりも良好な排水性能を示すことが確認された。これより、リブに異なる濡れ性を与えることで、ガス拡散層内の排水に有利な電池構造が実現可能であることを示した。
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