バイオマスガスをHCCIエンジンで利用するにあたって,組成が変動することから常時燃焼状態を把握すること,またその情報を元にした制御アルゴリズムの構築が必要である。前年度まで,燃焼時に発生するイオンは,均質予混合気の正常燃焼時の熱発生と非常に強い相関を持ち,さらに操作量として利用できる予混合気の不均質性が変化した場合でも熱発生と相関を持つことが確認されている。また異常燃焼時には,イオン電流も正常時とは明確に異なる挙動を示すことが明らかにされ,この手法をバイオマスHCCIの燃焼把握に利用することとした。一方,制御手法としては,熱効率を評価関数にイオン電流のピーク時期を制御することとし,予混合気の不均質性または都市ガス13Aとの混焼割合を,バイオマスガスの組成変動に対して操作するアルゴリズムおよび制御システムを構築し,その有効性を実機試験において検証した。 具体的には,まず,様々な燃料組成を用いた場合でも,イオン電流値最大値時期をある一定のクランクアングル範囲内に収めることで,そのバイオマスガスの燃料組成で実現できる最大の効率を得ることができることを実験的に明らかにした。次に,バイオマスガスの燃料組成が,時間変化する条件において,燃料組成に応じて予混合気の不均質性を操作することで,制御なしの場合に生じたノックによる効率低下を防いで安定した運転に成功した。また,都市ガス混合割合を操作することで,バイオマスガスの燃料組成変化によって生じる燃焼位相の変化に伴う効率低下を引き起こすことなしに運転が可能となった。なお,予混合気の不均質性による制御は,都市ガス13A混焼に比べて対応可能なバイオマスガスの組成変動幅が小さく,より大きな組成変動については都市ガス13Aの混焼割合を利用することが望ましいことが示された。
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