研究概要 |
本研究の主目的は,はく離を伴う複雑乱流場の熱・物質輸送におよぼす主流乱れの影響を実験的に調べることである。具体的には,2次元丘モデル周りの乱流場を対象として,動的な主流乱れ発生装置により主流乱れの強さやスケールを系統的に変化させて,2次元丘モデルの下流に形成されるはく離領域での乱流場の応答特性を同定し,熱・物質輸送機構に及ぼす影響を解明する,系統的に収集した実験データを整備し公開することにより,はく離を伴う複雑乱流場の熱物質輸送機構のモデリング分野に信頼性の高いデータベースを提供する,ことである。 本年度は,主流乱れ発生装置の改良と2次元丘模型周りの物質輸送に関する風洞実験を行った。 1. 主流乱れ発生装置による主流の乱流特性を精査した。具体的には,動的な乱流格子を有する主流乱れ発生装置によって励起される乱流場の主流乱れ強さおよびスケールを,格子の回転駆動方法を改良することで系統的に変化させる方法を検討し,主流乱れのスペクトル特性を明らかにした。その結果,格子幅の約35倍の下流位置において,主流乱れ強さは2%から最大13%まで制御され,理想的な局所等方性乱流を得ることができた。 2. 2次元丘周りの物質輸送に及ぼす主流乱れの影響を調べた。本年度は,主流乱れが小さい状況で2次元丘模型周りのエチレン濃度場の乱流諸量のデータを収集した。平均濃度測定には,ガスクロマトグラフィーを使用した。上流から移流してきたエチレンは2次元丘模型の存在により横方向に著しく拡散し,平均濃度分布はガウス分布では整理されないこと,下流のはく離領域内では濃度はかなり低下するが高さ方向には一様になること,が明らかとなった。また,変動濃度場の測定に必要となる高速FIDについて,その動特性を検討した。
|