研究概要 |
本研究の主目的は,はく離を伴う複雑乱流場の熱・物質輸送におよぼす主流乱れの影響を実験的に調べることである。具体的には,2次元丘モデル周りの乱流場を対象として,動的な主流乱れ発生装置により主流乱れの強さやスケールを系統的に変化させて,2次元丘モデルの下流に形成されるはく離領域での乱流場の応答特性を同定し,熱・物質輸送機構に及ぼす影響を解明する,系統的に収集した実験データを整備し公開することにより,はく離を伴う複雑乱流場の熱物質輸送機構のモデリング分野に信頼性の高いデータベースを提供する,ことである。 本年度は,2次元丘モデル周りの乱流熱伝達に及ぼす主流乱れの影響を調べた。また,濃度変動を計測するために応答速度の速い水素炎イオン化検出器(高速FID)プロープを製作し,その動特性を調べた。詳細は以下の通りである。 1.主流乱れ発生装置によって付加された強い主流乱れ(約10%)のもとで,2次元丘モデル周りに局所的に形成した高温域における速度場および温度場の特性を調べた。主流乱れを付加することで丘下流に形成されるはく離泡の大きさは小さくなるが,はく離せん断層での乱れ生成が強いため,主流乱れの強さに拘わらずはく離泡周りの乱流熱伝達の様子は大きく変化しないことが明らかとなった。 2.乱流による物質輸送のメカニズムを明らかにするために,応答速度の速い濃度変動計測法として高速FIDプローブを製作した。乱流境界層中で点源供給されたエチレン濃度変動の乱れ強さやスペクトルを計測した。平均濃度場はガスクロマトグラフィーによる結果と定量的に一致した。濃度境界層外縁で測定された濃度変動波形は非常に間欠的であること,スペクトルのピーク周波数が速度変動と同様に約100Hzに存在することなど,変動濃度場の重要な性質を明らかにすることができた。
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