研究概要 |
平成22年度は前年度の結果を踏まえ,まず熱自立可能な予混合SOFCの仕様を数値解析により決定することを試みた.典型的な燃料極であるニッケル-YSZ混合体は酸化触媒としても活性であることから,燃料極側は白金触媒を使わずニッケル-YSZ混合体のみで構成するものとした.空気極はLSCFである.前年度得られたニッケル-YSZ面での水蒸気改質反応の速度式を適用した.電池の長さ,両流路高さ,流量,投入ガスの組成比および入口温度を適宜,変更して1次元数値解析を行い,熱自立が可能な条件を模索した.単セル実験を想定しているため,熱漏れによる影響は大きく,実験室レベルの検討では特に断熱が鍵であることがわかった.市販の断熱材を利用した標準的な条件であっても,混合する空気の割合を多めに調整することで,十分に熱自立が可能である見通しをつけた.実験に使用するセルは電解質支持セルであったため,本研究で対象とする反応部平均温度550℃~650℃の範囲ではイオン抵抗が大きく十分な発電反応を得るにはいたらなかったが,薄い電解質を利用する電極支持型セルを採用すれば,発電反応による熱供給も期待でき,実用的な電流密度も達成されるものと予想される.スタック化した場合には外縁部からの熱漏れの影響も相対的に小さくなるため,燃料利用率をさらに上げられる可能性があり,これを検討するためのスタックシミュレータの原型も作成し,基礎的な検討を行ない論文にまとめた.
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