研究概要 |
マイクロカプセルに封入した相変化剤を冷却液に混入し,電子機器の液冷システムの性能を向上させることを目指し,その基礎研究に取組んだ。平成21年度は,実験装置および測定システムを構築することが第一の目的とした。さらに,基本的な圧力損失および伝熱特性を調査した。 カプセルの外径が50から250μmのマイクロカプセルを作成した。実験の結果,マイクロカプセルを3wt%程度添加した場合でも,管路の閉塞を誘発しやすいことが判明した。管路の閉塞は冷却性能を著しく低減するため,閉塞を防止することが必要である。そのため,より粒子径の小さなマイクロカプセル(5μm)および内径1mm程度の管路を用いて実験することとした。 相変化剤として,電子機器の冷却に適した温度で固体から液体へと変化するラウリン酸を採用した。ラウリン酸の融解温度は約45℃であり,発熱する電子部品の温度を50℃程度に維持する目的に適している。 基本的な圧力損失および伝熱特性を調査するため,直径1mmの円管内に,マイクロカプセルを含有する冷却液を流した。伝熱特性を調査するための円管には,温度測定用熱電対,および,加熱用電熱線を設置した。シリンジポンプを使い,バッチ方式で一定流量を流した。 マイクロカプセルを添加することで,加熱壁面の温度上昇を最大10℃まで低減でき,液冷システムの高性能化につながることを明らかにした。その一方で,圧力損失も増加することも分かった。相変化をしない微粒子を混入した液との比較から,微粒子による撹拌効果ではなく,相変化に伴う潜熱吸収によって,壁温を低減したまま熱を輸送できることを明らかにした。
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