研究概要 |
マイクロカプセルに封入した相変化剤を冷却液に混入し,電子機器の液冷システムの性能を向上させることを目指し,その基礎研究に取組んだ。平成22年度は,前年度に構築した実験装置および測定システムを改良し,伝熱特性を調査した。マイクロカプセル添加量を増やすために,内径の大きな伝熱管を新たに用意した。循環式流路にポンプを設置し,長時間の冷却実験が可能となるようにした。 相変化剤として,電子機器の冷却に適した温度で固体から液体へと変化するラウリン酸を採用した。ラウリン酸の融解温度は約45℃であり,発熱する電子部品の温度を50℃程度に維持する目的に適している。このラウリン酸を,直径約5μmのマイクロカプセルに封入した。マイクロカプセルは,電気伝導性のないフッ素系不活性液(FC-3283)に分散させた。 相変化マイクロカプセルの添加量を,質量濃度で1,3,5%と変化させ,脈動流れにおいて,伝熱特性を測定した。添加量をこれまでより多い5%にしても,壁面温度抑制効果が向上することが確認された。内径を1mmから2mmに拡大したことで,添加濃度を向上させることが可能であり,壁面温度を低くできることを明らかにした。 近年の電子機器では,より高い冷却性能が要求されている。本研究で開発した冷却システムでは,より大きな発熱密度にも対応が可能であり,今後の電子機器冷却へと適用できる。マイクロカプセルの添加量や相変化温度を調整することで,様々な製品に適した冷却システムへと発展することが期待される。
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