研究概要 |
液滴の非定常燃焼挙動に及ぼす雰囲気性状の効果を明らかにするため,微小重力環境下における二酸化炭素およびアルゴンを含む雰囲気中において,炭化水素やアルコール燃料の燃焼挙動を観察した.液滴径の変化,火炎の様子および熱電対による温度測定を行った.二酸化炭素雰囲気中においては,二酸化炭素濃度が増大するとすす生成が抑制されるのに加え,燃焼速度の平均値は濃度の増大により減少した.特にn-デカンといったすすを大きく生成する燃料に対しては,空気中の燃焼で観察された燃焼速度のステップ状の変化が二酸化炭素濃度の増大により観察されなくなった.また,燃焼期間内において燃焼速度の緩やかな上昇が観察された.燃焼速度に及ぼす液滴火炎内のすすの影響や気相放射の影響が明確に示された.エタノールの場合には燃焼期間中の燃焼速度の増大はあまり観察されなかったが,より沸点の高いn-ブタノールにおいては明確に燃焼速度の上昇が観察された.水蒸気溶込みと放射の影響が示唆される.エタノールとn-デカンに対しては火炎の温度測定を行った.二酸化炭素を60%含む雰囲気中においては,空気中の場合と比較すると200K程度の温度低下が見られた、また,空気中におけるステップ状の燃焼速度の変化が観察される場合,それに対応するような火炎温度の複雑な変化が観察されるが,エタノールや二酸化炭素濃度が増大した場合にはそのような温度変化は観察されなかった.非定常燃焼速度挙動と火炎温度およびすす特性の関係が示された.アルゴンを雰囲気に含む場合にはすすの生成が促進された.アルゴン濃度の増大とともに燃焼速度の増大が観察された.n-ブタノールではアルゴン濃度の増大により輝炎が観察されたものの燃焼速度のステップ状の変化は観察されなかった.さらにn-ブタノールに対し,酸素濃度を40%程度まで上昇させると輝炎の輝度は増大するがすす殻は観察されず,n-デカンのようなステップ状の燃焼挙動は観察されなかった.非定常燃焼挙動に及ぼす燃料の反応性とすす濃度の影響が示された.
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