近接場光は光の波長よりも十分に小さい開口に局在する非伝播光成分であり、そのしみ出し深さは開口径と同程度である。ナノサイズの微小開口を有する近接場プローブを用いることで、光の回折限界を超えた高い空間分解能で試料の光学応答を分析することができる。本研究では、ナノ領域において「そこにどのような構造の分子が、どの程度結晶欠陥やボイドを有し、どのくらい均一・均質に基板に修飾されているか」を光学的に直接モニタリングする革新的その場測定手法を確立することを目指しており、平成21年度は以下に挙げる具体的な成果を得るに至った。 ◆超高感度近接場蛍光熱顕微鏡の開発 (1) コアの構成材料が純粋石英であるファイバーを近接場ファイバー母材に選定した。レーザー分光によるファイバー母材の自家蛍光を測定したところ、従来の近接場ファイバーの30%程度のノイズであることが明らかになった。また、ファイバー母材の蛍光寿命の測定を位相分解蛍光寿命測定法を用いて行った結果、量子ドットの蛍光寿命よりも遥かに短いことが分かった。 (2) Geを高濃度にドープした近接場ファイバーを純粋石英ファイバー先端に200μm程度だけ作成する方法を提案した。本方法を用いることにより、自家蛍光の影響を低減させることが可能となった。コア径が異なる2種類のファイバーを融着するために、放電強度ならびに融着位置、スイープ速度等の融着パラメータを決定し、低損失な融着ファイバーの作成に成功した。
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