研究概要 |
交付申請書に記載した内容に沿って説明する.理論的な検討の結果,効果が低いと判断したものは研究を中止した.逆にその後新しく取り組んだ研究もあるので,それについては最後にまとめる. 1 圧電素子貼付範囲の制振対象の剛性,圧電素子の機械的剛性,電気的剛性の関係を明らかにする 理論的に三種類の剛性の関係を求め,制振対象の剛性と圧電素子の機械的剛性が等しくなる場合に圧電素子の制振効果が最も高くなるという知見を得た.これは,視点を変えれば,圧電素子を制振対象に貼付する場合にもインピーダンス整合の考え方が適用できるということである.実験では,スペーサーを介して圧電素子を貼付することによって最適な剛性の関係を実現し,従来のように直接貼付した場合と比べて本研究では最大で約5倍の性能が得られた. 2 負剛性を用いる手法の検討 圧電素子を貼付するとその範囲の剛性が大きくなるが,これは圧電素子の制振性能の低下につながる.1ではスペーサーを用いて圧電素子の見かけの剛性を高めることでインピーダンス整合を図ったが,制振対象の剛性を低下させて整合を図る方が本来は効果が大きい.そこで,電気的に圧電素子貼付範囲の剛性を低下させる手法と機械的な構造でそれを達成する手法を考案し,理論的にその有効性を確認した.次年度中に実験的にも検証し,成果をまとめる予定である. 3 接着剤のモデル化と圧電素子の幅方向の拘束の影響 圧電素子の性能を理論的に求める上で,圧電素子の幅方向の拘束と接着剤の剛性の影響が無視できないことが新たに分かったため,それらの理論的なモデル化を行った.その結果,圧電素子は長手方向だけでなく,幅方向にも強く拘束する方が制振性能は高くなるという知見を得た. 今年度は圧電素子の性能を決定する因子を理論的に明らかにした.次年度はこれらの知見をもとに実際に性能を高める装置の研究を進める.
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