研究概要 |
波動制御法は,構造物にダンピングを付加するのではなく,モード励振の元凶となる反射波を除去することで,全振動モードの不活性化を可能とする.さらに,構造物中のある領域に流入する波動を除去することにより,無振動状態の生成を実現する.本研究ではこれまでに等方性構造物を対象に展開されてきた波動制御理論を,直交異方性を有する構造物の場合にまで拡張することを目的としている.当該年度において得られた成果は以下の通りである. (1) 等方性平板の場合,cut-on周波数(波動の種類が変化する周波数.具体的には,波動項の指数関数の肩が実数から虚数に転じる,あるいは実数から複素数に転じる周波数)は1種類のみであったが,直交異方性平板の場合は2種類のcut-on周波数が存在することが明らかになった.したがって,直交異方性平板における波動は,2つのcut-on周波数によって分割された3つの帯域において,異なる特性を持つことが明らかになった.さらに,波動解の基本的な構成は等方性平板の場合と変わらないことから,従来の波動フィルタリング法を比較的容易に転用できることが明かになった. (2) 直交異方性平板を対象にフィードフォワード型波動制御法を提案し,当該手法の有用性を数値解析の観点から立証した.当該制御系を構築する際には,常に振動を抑制するために,cut-on周波数によって分割される帯域ごとに,適切な波動項を抑制対象に選択する必要があることを明らかにした.この結果は,今年度に行われるDynamics and Design Conference 2010において発表予定である.
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