研究概要 |
波動制御法は,構造物にダンピングを付加するのではなく,モード励振の元凶となる反射波を除去することで,全振動モードの不活性化を可能とする.さらに,構造物中のある領域に流入する波動を除去することにより,無振動状態の生成を実現する.本研究ではこれまでに等方性構造物を対象に展開されてきた波動制御理論を,直交異方性を有する構造物の場合にまで拡張することを目的としている.当該年度において得られた成果は以下の通りである. (1)直交異方性平板を対象にフィードバック型波動制御法を提案し,当該手法の有用性を数値解析の観点から立証した.当該制御系を構築する際には,フィードフォワード型波動制御法の場合と同様に,cut-on周波数によって分割される帯域ごとに,適切な波動項を抑制対象に選択する必要があることを明らかにした.特に,無振動状態の生成については,ゲイン特性の漸近線レベルを抑制することが重要であるため,制御則の切り替えは重要である. (2)一般に波動制御則は,ラプラス演算子の有理関数によって記述されることはなく,非因果的な制御則となる場合が多い.また,フィードバック制御の場合,系の安定性を担保する必要がある.そこで,本研究では,根軌跡およびナイキスト線図によって手法そのものの安定性を議論した後に,コロケーション条件の下に無条件安定が保証されているDVDFB制御(Direct Velocity and Displacement Feedback)をクラスタ制御にまで展開し,指定された周波数を対象に波動吸収が達成できる手法を提案した. なお,上記の結果は,今年度に行われるDynamics and Design Conference 2011において発表予定である.
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