本研究の目的は、宇宙における生活空間でのモビリティシステムの開発である。平成21年度は、以下の検討を行った。1.マルチボディ・ダイナミクスの観点から、テザー(ひも)を用いたモビリティシステムのモデリングを行った。この時、無重力状態では、ひものような部材は大変形・大回転を伴った運動を行うため、そのような状態を表現可能な柔軟体要素を用いた。また、大気などの流体力に関する検討を行うため、テザー(ひも)に作用する流体力の効果を考慮した。構築したモデル、および数値解析環境を活用し、テザーを利用した移動方法、及びその制御方法について調べた。また、次年度へ向け上記のモビリティシステムの実機製作のため、実験装置の仕様についても数値シミュレーション結果を基に、仕様決定を行った。開発したシミュレータを用いた数値計算結果から、無重力状態における、テザー(ひも)を用いたモビリティシステムは、重力が作用する地上で用いたシステム(例えばクレーン車で利用されているような荷を移動させるシステム)とは異なり、テザー(ひも)を巻き取るだけでは安定して、物や人間を移動させることはできず、安定化のための制御システムを考慮した設計を行わなければならないことを示した。これらの成果は、国内の講演会における発表に加え、また、平成22年度に開催される、マルチボディダイナミクスに関して、最も大規模な国際会議となる、the 1st Joint International Conference on Multibody System Dynamicsにおいて成果を発表予定である。
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