研究概要 |
ディスクブレーキの制動時に生じる騒音である鳴きは,ディスクやパッド・キャリパの振動が連成して生じる自励振動である.このため,ブレーキ各部単体の固有振動数だけではなく,ディスクとパッドの摩擦接触部の振動特性が鳴きに影響する.鳴きを模擬した周波数と振幅でパッドの摩擦接触部を加振した際の動剛性は,静的な荷重を加えた際の静剛性よりも大きくなる.この動剛性は,制動時にパッドに加える圧力に応じて大きくなり,鳴きの圧力依存性や鳴き発生自体の原因となる. 制動時の摩擦接触部の状態はしゅう動によって変化するため,鳴きの発生に影響を与える可能性がある.そこで,回転するディスクに押し付けたパッドを鳴きの周波数と振幅で加振することで,しゅう動時の摩擦接触部の特性(剛性,摩擦係数)の変化をリアルタイムに測定できる装置を開発した. 平成22年度は,装置の構造を見直し,測定精度を向上した.まず,鳴き周波数帯域(2kHz付近)での測定ができるように装置の共振をなくした.次に,パッドに加わる摩擦力を支持する部分に潤滑を加えて,摩擦による加振力の損失をなくした.その結果,ディスクの回転機能をもたない装置と同等の精度で,しゅう動時の動剛性を測定できるようになった.ただし,装置の改善を優先したため,摩擦係数を測定する力センサの取り付けは準備段階である. 本研究で開発した装置は,ディスク回転速度や制動力の増減など様々なしゅう動条件における摩擦接触部の剛性の変化を測定できる.摩擦接触部がしゅう動している時の剛性は,静止時よりも一定値だけ低下していた.パッドの種類(組成)や表面粗さによるしゅう動時の剛性の違いや長時間のしゅう動による剛性の変化が鳴きに与える影響を論文にまとめる予定である.本研究の成果を用いることで,しゅう動による摩擦接触部の剛性の変化を考慮した鳴きの発生しにくいブレーキが開発できる.
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