研究概要 |
本研究は,耐震性評価手法として近年注目されている「エネルギー釣合式(総エネルギー入力)」と疲労強度学における「ヒステリシスエネルギー」との関係を解明し,ヒステリシスエネルギーから耐震強度や疲労損傷時期の推定を行う手法を構築することを目的としている、研究初年度にあたる平成21年度は,(1)供試体の設計・製作,(2)正弦波による曲げ疲労試験,(3)正弦波による疲労破損を伴う振動試験を主に行った. (1)では,本研究で使用する供試体の他,研究目的に合わせた治具を設計・製作した.供試体は質量部,支持部からなり,質量部の質量や支持部の材質及び長さを適宜組み合わせることで,計5種の特性を有する.その後,設計・製作された供試体を用いて,(2),(3)の試験を行った.(2)では,支持柱の両端を固定し,そのうちの一端に強制変位を周期的に与えることで,供試体を疲労破損させた.本試験結果は,ヒステリシスエネルギーの観点から評価された.(3)では,供試体の一端を固定,他端に質量部を付け,固定端に正弦波を入力することで,供試体を疲労破損させた.本試験結果は,総エネルギー入力の観点から評価された.その結果,「曲げ疲労試験と振動試験における供試体の変形モードは同様であること」,「変形量が同様であれば,破損に要するヒステリシスエネルギーと総エネルギー入力は同程度であること」が確認された.本結果より,有限要素法等で破損に要するヒステリシスエネルギーを求め,その後,単純なモデルによる地震応答解析で地震時に入力される総エネルギー入力を算出し,両者を比較することで,耐震強度及び疲労破損時期の推定が可能になると考えられる.
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