本研究は圧電セラミクスを振動制御系のアクチュエータとして用い、制御スピルオーバを引き起こすことなく、構造物の振動制御を実現することを目的とする。21年度はアクチュエータとして使用する圧電セラミクスについて、基本的な性質の理論展開を中心に研究を行った。22年度は、圧電セラミクスを振動制御用のアクチュエータとして用いた際の特性について、実験を行い検証した。実験は、圧電セラミクスをエポキシ系接着剤により窓ガラスへ貼付し、窓ガラスの振動制御を行うことで性能を確認する。窓ガラスは、30~800Hzのホワイトノイズを用いて音響加振を行い、これによって励起された窓ガラスの振動を、圧電セラミクスを用いて抑制した。この実験により、圧電セラミクスによって振動が抑制できる場合と、抑制できない場合が存在することを明らかにした。この結果は、圧電セラミクスの能力に起因する問題ではなく、音響モードが直接構造物を励振する現象が起きていることを明らかにするきっかけとなったものである。この後、閉空間場と開空間場における窓ガラスの実稼動モード解析を行い、閉空間場では構造物の振動モードに関わらず、音響モードがダイレクトに窓ガラスを励振する現象があることを明らかにした。この成果については、22年9月に開催された日本機械学会D&D2010にて口頭発表を行っている。また22年度には、理論検証のために必要な単純支持平板実験装置の基本設計を行い、製作を行った。23年度は本実験装置を用いて、これまでの理論の検証を行う。また、構造物の振動と、空間の音響モードとの関係について、日本機械学会論文集への投稿を行う予定である。
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