研究概要 |
光照射による機能を制御可能なマイクロツールに関する研究を行った.今年度は(1)光照射で細胞への付着性を制御可能なマイクロツール,(2)光照射で水素イオンを放出しpHを低下させるマイクロツールを作製し基礎実験を行った. 細胞付着性を制御するマイクロツールに関しては,溶液中の電解質濃度を制御し,対象に適した濃度範囲において近紫外光をマイクロツールに照射することで対象への付着性を誘起する手法と実現した.この手法は不可逆な付着方法である.これに加え,フォトクロミック材料のスピロピラン化合物をマイクロツールに導入することで,紫外光照射時に細胞付着性が発現し,可視光照射で付着を失う可逆的な細胞付着性を有するマイクロツールを作製し,前述の不可逆的な手法と併用することでオンデマンドな細胞付着制御を実現した.この手法は細胞の選択的な分離や解析時の一時的な固定に適した手法であり,マイクロツールにセンサ機能を付与することで,細胞の活動や代謝をリアルタイムに計測可能となる. pHを制御するマイクロツールに関しては,フォトクロミック材料のロイコクリスタルバイオレットをナノサイズに調整したツールに導入し,近紫外光を照射することでツール周辺のpHが低下することを確認した.このツールを弱酸性下で細胞膜と融合する性質を有する膜融合リポソームに導入し,細胞接触時にpHを低下させることで膜融合リポソームの選択的な細胞付着を実現した.この手法を用いることで次年度作製する計画のマイクロ・ナノツールを細胞内へ導入することが可能になると考えている.
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