研究概要 |
本研究の目的は,可動領域が広いパラレルメカニズムにおける機構の特性解析と最適化である.パラレルメカニズムは,トラス構造を採ることができるため,システム全体としての剛性が高いなどの利点はあるものの,駆動装置を固定しても姿勢を保持できない第2種特異点が存在する.この第2種特異点は,幾何学的構造上,除去することができない.このため,従来の研究では,これらの特異点を避ける研究が進められている.これに対し,本研究では,リンク構成が変わることで特異点の位置が変化することに着目し,特異点の位置を幾つかの場所に集めることを目指した.具体的には,本研究で提案しているメカニズムのうち内折型と外折型を交互に配置した複合型を調査対象とし,特定のリンクの長さを変化させることによって特異点分布がどう変化するのかといった傾向を調査した.その結果,リンクの長さを標準の長さより長くした場合,外折型のリンクが存在する60゜の領域において特異点の割合が大幅に減少することが確認できた.リンク長を標準の長さよりも短くした場合も,減少する傾向が確認できた.また,これらを検証するために,機構ガタが少ない試作機を作成し,実機による検証を行った. 従来のパラレルメカニズムでは対称型の機構が当たり前となっていた.本研究では,個々のリンク長を変えた非対称型の機構にすることによって,特異点分布を変化できることを確認した.このことは,作業用途に応じて適切なリンク構成にすることで,特異点の少ない領域を意図的に作り出せる可能性があることを意味する.以上が,本年度の研究成果である.
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