研究概要 |
本研究では新しいアクチュエータ/センサとして期待されているIPMC (Ionic Polymer-Metal Composite)が有する一定変位を保持し続けるのが困難であるという問題点を複数のIPMCを組み合わせて使用し,協調させることで解決することを目指す.さらにこの機構を小型のグリッパの把持部分に適用して,位置決め制御,力制御をおこなうことを目的とする.この問題点は,IPMCがもつ応答緩和特性に起因する.応答緩和現象の影響を軽減することができると,IPMCを用いたアクチュエータを位置決め制御や力制御へ応用することが可能になり,仕様用途の拡大につながる.特に,IPMCそのものは外力が加えられたときに柔軟に変形するので,人間と協調して作業するロボットへの適用が期待される.解決法として,本研究では2つの方法を提案する.ひとつは,2枚のIPMCに制御電圧に逆位相の電圧を付加したものを与える「ゆらぎ成分追加型」で,もうひとつは2枚のIPMCを交互に使用する「切替型」である.また,小さい電圧で駆動することから,マイクロ,ナノの単位の小型のアクチュエータへの応用も期待できる.その結果,「ゆらぎ成分追加型」と「切替型」の双方で効果が確認できた.「ゆらぎ成分追加型」では,一定の力を保持することができる時間が2倍以上増加した.1枚でもゆらぎ成分によって制限電圧に達するまでの時間が延びることも確認できた.一方,「切替型」では,一定の力を保持できる時間が非常に長くなることが期待されるが,切替時にパルス上の発生力の変動が生じ,また時間の経過とともに切り替えが頻繁になる問題があり,さらなる改良が必要である.なお,切替が頻繁に生じる原因は,IPMCが持つ逆応答特性によるものであることがわかった.
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