本研究では、MEMS製造システム技術のフレキシブル化・ハイスループット化を目的として、駆動機構を有する複数の機能を集積化したマイクロシステムを単一マスクパターンからアセンブリフリーで作製する方法を開発した。本技術の特徴は、複雑に流路が入り組んだマイクロ流体システムの作製と、さらにその内部に磁気駆動素子を組み込むことをアセンブリフリーでできる点にある。独自の加工技術である単一マスク回転傾斜露光法により、(1)フォトレジストを塗布して縦・横流路構造を一度に作製し、(2)さらに(1)とは逆型のフォトレジストに磁気微粒子を懸濁し、流路内に導入して同一マスクを用いて露光することによって、磁気駆動素子をマイクロ流路内に作製・同時設置する方法を提案した。 初年度は、レジストに磁気微粒子を懸濁した複合材料の加工性評価を行い、微粒子を高粘度のレジストに均一撹拌する技術と、その分散度測定のための光学システムを構築し、均一な光学特性と必要な加工精度を得るための条件について検討を行った。 最終となる本年度は、駆動特性の定量評価のためのカンチレバー型駆動力評価システムを構築し、吸引力と磁気微粒子混合度の関係と、レジスト膜厚に関する加工精度を評価し、最終的な応用例のひとつであるマイクロバルブの試作を開始した。プロトタイプとして、ソフトマイクロマシニング技術を用いて作製した透明なシリコンゴムの一種であるPDMS(ポリジメチルシロキサン)製のマイクロ流路に、剥離層となる低粘度ポジ型フォトレジストを導入して流路壁面にレジストを付着させた後に、磁気微粒子を含むネガ型フォトレジストを流路内に導入することで、流路内部の複合材料をオンサイトで外部から露光・現像・流路内リリースする方法を提案し、作製した駆動素子がマイクロ流路内の液中で駆動可能であることを電磁石を用いた駆動試験により確認した。
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