人が機械を操作する時の双方向制御、仮想空間内で再構築された物体情報の人への直感的な提示、音声、画像に続く新たな情報通信メディアとして期待される触覚情報の利用には、微小なアクチュエータが高密度にアレイ化され、皮膚を機械的に変形、皮膚内部に分布する触覚受容器群を時空間的に刺激し、触覚情報を人に提示する触覚ディスプレイの開発が不可欠である。本研究の目的は、触覚ディスプレイに適用可能な、上下面で断面積の異なるマイクロチャンバ内に非圧縮性流体を封入した変位増幅機構を有する、変位増幅型マイクロアクチュエータを実現することである。製作にはMEMS技術を用い、微細化、アレイ化を目指す。本年度は、変位増幅機構製作に必要な液体封入技術の研究を行い、製作プロセスの確立および液体封入における接合強度、アライメント精度を評価した。水、グリセリン、電解質を封入した際は、空気を封入したときと同等の接合強度が達成できること、また液中での接合においても6ミクロンの精度でアライメントできることが明らかになった。その成果を国際学会1件、国内学会1件で発表し、国際論文誌に投稿した。また、開発した液体封入技術を用い製作した変位増幅機構について、静的動的な特性を評価した。固有振動数は封入液体の質量で決定できること、粘性は液体封入薄膜の粘弾性に由来することがわかった。その結果を国際論文誌において発表した。さらに、変位増幅機構を用いた触覚ディスプレイについて、特に動的な触覚刺激について研究を行い、振動により敏感なヒト触覚受容器の特性を生かした効率良い触覚提示に成功した。国際論文誌に採択されるとともに、国際学会1件(口頭発表採択率5.6%)、国内学会2件(内1件でBest Presentation Award受賞)で発表した。
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