研究概要 |
本年度は,大別して,1)マイクロ分注チップの10nl毎の切分け繰返し精度の向上,2)マイクロソレノイド完全内蔵型多分岐切換バルブチップの製作,3)血球分離フィルタチップの開発,の3つの研究成果を得た. 1)は,サンプルの10nl毎の切分け繰返し精度を向上させるため,分注チップ内のチェックバルブの低開放圧化,分注流路内に設置したオリフィスによる特定箇所の流路抵抗制御,全反射を利用したマイクロ流体検知法,の3つの要素を改良した.この改良を基に,マイクロ分注チップの実証モデルを設計製作し,検証実験を実施した結果,10ナノリットル毎の切り分けの繰返し精度を向上させる指針を見出すことができた. 2)は,研究実施計画にあるソレノイド完全内蔵モデルの切換バルブの開発に当たり,円弧状マイクロソレノイドの性能向上とソレノイド完全内蔵切換バルブチップの設計指針について検討した.具体的には,円弧状マイクロソレノイドを試作し,各種パラメータとソレノイドの性能との関係を測定した結果から,切換バルブチップのいくつかの設計変更箇所を見出した. 3)は,送液中に全血から血球成分を分離して血漿成分を抽出するPDMS製マイクロフィルタチップの原理検証機を開発した.赤血球をもPDMSチップでフィルタリングするため,フィルタのスリット幅×高さを約2μm×2μmとした2層構造のフィルタを製作した.さらに,送液中に血球にかかる圧力を低減するため,血球が循環する流路形状を提案した.これらをフォトリソグラフィ技術によりチップ化することに成功した.また,本マイクロフィルタチップを用いた検証実験により,赤血球などの血球成分をフィルタが捕捉して血漿成分を抽出できることを実証した.
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