本研究では、高分子素材のアクチュエータ/センサのプリント技術を用いた素子作製法を確立し、小型ロボットなどの機械システムへの応用を目的としている。対象としている素子は、「バッキーゲル素子」と呼ばれるもので、カーボンナノチューブとイオン液体、高分子材料で構成される3層構造の素子である。材料を溶媒に分散させた溶液を各層ごとに重ねてフィルム状に成型し、溶媒を乾燥させることで作製できる。この製作過程において、プリント技術を適用し、通常の手作業では実現が不可能な小型素子や複雑な形状の素子、また、電極のパターニングによる新たな機能を持つ素子を作製し、応用の可能性を検証している。本年度は、従来から取り組んでいたディスペンサによるプリント手法の最適化と、インクジェットプリントの適用可能性の検証に取り組んだ。具体的には以下の通りである。 1. ディスペンサを用いたプリント法の最適化:プリントを行う上で、一番の問題となるのは、ノズル先端での材料の目詰まりである。連続的で安定な塗布を実現するため、材料の粘度、塗布圧力の調整、また、揮発しづらい溶媒を選択するなど、塗布条件の調整を行った。さらに、サンプルを試作し、検証を行った。 2. インクジェットプリントの検討:インクジェットプリントの適用可能性について検証を行うため、プリントシステムの選定と、材料の物性特性評価を行った。今後は、材料特性の調整をすすめ、インクジェットプリントの検証、サンプル試作・特性の検証を進める予定である。
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