研究概要 |
本研究では,ロボット技術を応用し,任意に操作可能な環境を作り出すことで,ストレス・脆弱性モデルに即した精神疾患モデル実験系の構築が可能となるとの仮説にもとづき,創薬および精神疾患に関する基礎研究のための,新たな疾患モデル実験系を実現することを目的としている.本研究は,(1)より多様なラットの社会行動を再現可能な小型移動ロボットの開発(2)疾患を発症させるためのロボットの動作アルゴリズム(実験プロトコル)の開発(3)疾患発症を検知し,定量的に評価するアルゴリズムの開発,の3項目よりなるが,平成21年度は(1)および(2)に特に注力して研究を行った. その結果,新たに脚・車輪ハイブリッド型アニマロイドの開発に成功した.このロボットは,駆動用車輪とインタラクション用脚の両方を供えており,高速移動とラットの多様な社会行動の再現の両方が可能となっている. 一方,精神疾患モデル動物作成のアルゴリズムの開発を目的として,これまでに開発した車輪式移動ロボットを用いてさまざまな実験を行った.その中で,幼若期にロボットを用いてストレスを暴露することで,その個体が成熟後に精神疾患様の行動を示すようになることが確認された.また,幼若期にロボットによるストレスを暴露した個体に対して,成熟後にロボットによるストレスを暴露すると,幼若期にそれを経験していないラットより,過敏な反応を示すことが確認された.これは,幼若期におけるロボットによるストレス暴露がトラウマを形成したと見ることができる. 以上のとおり,本研究は当初の目的達成に向けて順調に進んでいる.
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