本研究は実世界触覚情報の伝達・変換・記録に関するマイクロバプティクス技術の開発を目的としており、平成22年度では主に次のような研究成果を得た。 1.並列多自由度を有するハプティックシステムの運動を、物理的意味を持った独立な運動要素に分解表現するための、離散フーリエ級数展開に基づく運動モード分解理論を確立した。本理論によって、(1)複雑な並列多自由度システムの運動を、空間的な直流成分と交流成分との組み合わせとして、簡単な実数演算のみで記述できること、(2)システムの配置が空間的な対称性を有していない場合にも運動モード分解が適用可能であること、を示した。 2.構造が異なるハプティックシステム間での触覚情報伝達技術を開発した。各システムの運動学を考慮したハプティックエネルギー変換を達成することで、異構造システム間でも鋭敏な触覚伝送が可能であるとの知見を得た。 3.実時間ネットワーク上での触覚伝送が可能な実験環境を構築し、ハプティックシステム間の時間分解能が異なる場合には、特有の追従誤差とカフィードバック性能の劣化が生じることを実験的に明らかにした。さらに、これらの触覚伝送性能劣化を改善するモード空間外乱オブザーバを開発し、その有用性を実験実証した。 これらの平成22年度の研究成果については、学術論文誌論文1編、査読付き国際会議発表論文3編、国内会議発表論文7編および招待講演1件の形で公表することで、社会に対する学術的成果還元を行った
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