研究概要 |
外来電磁妨害波に対する電子機器の耐性(イミュニティ)を抜本的に改善するためには,そのイミュニティ特性を正確に評価することが必要である.報告者は,電子機器の放射イミュニティ・感受性特性をより迅速かつ詳細に得ることを目的として,これまでさまざまな電磁環境を模擬することのできる回転電磁界型放射イミュニティ・感受性特性測定法の検討を行っている.本研究課題では,新たに周波数変調された回転電磁界(FM回転電磁界)を用いた方式を提案するため,その有効性についての検証を行っている.FM電磁界は放射イミュニティ試験用の印加電磁界として国際規格等で定められているものではないが,FM電磁界を利用することにより周波数拡散クロック(SSC)による電磁妨害波などの複雑な電磁環境の模擬が可能になると考えられる.平成21年度は,FM回転電磁界とその発生原理について理論的に明らかにし,それに基づいてFM回転電磁界の発生装置を試作し,実際にFM回転電磁界を発生させ,その基本特性について検討を行った.報告者らがこれまで開発した装置を用いてFM回転電磁界を発生させるために必要な2波のFM-DSB-SC波を発生させた場合,各部で発生する位相偏移がFM-DSB-SC波の品質の劣化を引き起こすことから,今回新たにアップコンバータを用いて発生させる手法を考案し,本手法に基づいたFM回転電磁界用FM-DSB-SC波発生装置を試作した.また,これを用いて6面電波暗室内にFM回転電磁界を実験的に発生させ,これを観測することにより,その基本特性の検証を行った.その結果,任意の回転周波数,変調周波数及び周波数偏移を有するFM回転電磁界の発生が可能であることを明らかにした.
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