研究概要 |
近年の電磁環境の劣化にともない,外来電磁妨害波による電子機器の誤動作が問題となっている.電子機器を取り巻く電磁環境を改善するためには,電子機器から放射される電磁妨害波の問題(エミッション問題)と,外来電磁妨害波に対する電子機器の耐性・感受性の問題(イミュニティ問題)の両面から検討する必要がある.このうち,イミュニティ問題を解決するためには,まず電子機器の耐性(イミュニティ特性)・感受性を正確に把握することが重要である。本研究では,複雑な電磁環境に対する電子機器のイミュニティ特性・感受性をより詳細に得るための新たな方法として,周波数変調された回転電磁界(FM回転電磁界)を用いる手法を提案している.前年度において,電子機器への印加電磁界として使用するFM回転電磁界の発生原理とその具体的な発生方法を明らかにし,これに基づく発生装置の試作と検証を終えている.今年度は,試作した装置を用いて実際に電子機器の感受性測定を試行することにより,本方式の有効性の検証を行っている.検証のための感受性測定は,FM受信機を被測定機器として6面電波暗室内で実施している.暗室内に配置した直交対数周期アレーアンテナを用いてFM回転電磁界を発生させ,ターンテーブル上に配置したFM受信機に印加してその感受性を評価した結果,比較的大きな周波数偏移を有する印加電磁界であっても,その偏波面及び到来方向に対する感受性が短時間で容易に得られることを確認した.このことは,周波数拡散クロックからの電磁妨害波のような周波数偏移の比較的大きい電磁波も回転電磁界により実験的に模擬できることを示しており,提案する手法により得られたイミュニティ特性・感受性が電子機器の高イミュニティ設計に指針を与えることが期待できる.
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