IHクッキングヒータは、オールメタル対応モデルの登場とオール電化住宅の波に乗り、近年身近な家電製品へと成長した。しかし、アルミニウム、銅や非磁性ステンレスを材質とした被加熱物に対して加熱効率が低く、IHの利点を発揮できていないのが現状である。一方でこれらの材質は熱伝導率が高く、またアルミニウムにおいては軽くて加工が容易な上錆びにくいといった特徴をもつことから鍋やフライパンに非常に適しており、IHの高効率加熱化が待望されている。 この課題に対し、まず材質による加熱課程の違いを調査するため、一昨年度、被加熱物の代表例である鉄とアルミニウムに焦点をあて、磁束分布と渦電流分布の有効な測定方法について実験を重ねた。その結果、サーチコイルとサーモグラフィを用いた測定が有効であることがわかったが、得られた結果に不自然な箇所(磁束の向きについて)が一部あり、加熱課程の導出まで至らなかった。そこで昨年度、磁束測定部を細部まで調査し、さらに測定範囲を3次元に拡大した結果、サーチコイルの問題点とその解消法がわかり、不自然であった現象も含めて以下の結果を得ることができた。 (1)強磁性体では表皮効果により磁束が鍋底に集中し、鍋底の中心を除いて縁へ向かって放射状に広がる。渦電流も鍋底に偏り、高周波であるほど加熱効率が高い。 (2)常磁性体及び反磁性体では表皮効果により鍋の側面に磁束及び渦電流が集中し、側面の加熱効率は上がるが鍋底を広範囲で加熱できなくなる。よって、材質の熱伝導率との兼ね合いで加熱効率が最も高くなる周波数が存在する。 今後、誰でも設計を容易に行えるよう等価回路化に持ち込みたい。一方で負荷変動が大きくなることを前提にインバータのソフトスイッチング化を行ったが、回路を大型化させてしまった。これは継続して検討が必要である。
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