放電や静電気は、プリンター、空気清浄機など生活に欠かせない電気電子製品に利用されているが、電子機器の誤動作などの障害の原因となる可能性がある。ナノテクノロジーが応用された電気電子製品の増加にともない、この種の障害は今後より一層増加する可能性がある。 オフィス内を人体が移動すると、人体は10キロボルト程度の電圧に帯電し、この帯電した物体がパソコンなどの電子機器の近くを移動すると、電子機器が誤動作を起こす可能性がある。その電子機器の誤動作は、電子機器の金属筐体内に生じる誘導電圧が原因で起こる。このような電子機器の誤動作を防止するには、金属筐体内に生じる誘導電圧を明らかにし、電子機器設計に指針を与える必要がある。 しかし、帯電した物体が金属筐体の近くを移動したとき、金属筐体内に生じる誘導電圧を測定することは難しい。一般的な電圧計のケーブルは、金属筐体内の電界分布を乱す原因となる。また金属筐体内に生じる誘導電圧の測定に適した非接触型の電圧計は、申請者の知る限りでは国内外にはない。 本研究では、申請者がこれまでに提案した非接触型の誘導電圧測定法を用いて、大きさの異なる金属筐体内に生じる誘導電圧を明らかにした。本実験研究の結果、金属筐体内に生じる誘導電圧は、金属筐体の大きさにほとんど依存しない可能性があることが示された。このことから、例えば『iPad』や『iPod』などの小型のタッチパネル式ディスプレイ内部にも、帯電物体が近づくだけで相当大きな誘導電圧が内部の電子回路基板に生じ、メモリー等の電子部品が故障している可能性があることがわかった。本成果はこれまでに詳細に検討された例がないため、学問上の貢献度も大きいと思われる。
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