一般に発光素子の外部量子効率は、内部量子効率、注入効率、光取り出し効率の積により表される。窒化物半導体発光素子の効率改善に向け、(1)非極性面や半極性面の利用による分極電場の抑制、(2)インジウムの混晶化、(3)ナノ構造の利用、(4)表面プラズモンの利用等が挙げられる。本研究では、紫外線発光素子応用に向け、(1)、(2)の観点から非極性面AlInN混晶の基礎研究を行った。前年度はエピタキシャル成長を行い、今年度は、「偏光が制御された紫外線発光素子の開発に向けた指針を示す」ことを目的とし、極性C面と非極性面のAlGaN、InGaN、AlInN三元混晶薄膜における価電子帯のオーダリング、バンド間遷移の振動子強度を理論計算により解析した。 AlN、GaN、InN基板上ヘコヒーレント成長させたケースを想定し、k-p摂動法を用いて計算を行った。例えば、無歪みAl_<1-x>In_xN混晶薄膜ではInNモル分率x=0.889を境に偏光方向がC軸に平行な方向から垂直な方向へと変化した。一方、非極性面GaN上にコヒーレント成長させるとAl_<1-x>In_xN層は非等方な歪みを受け、X≦0.185では成長面外方向、0.185≦X≦0.910では面内のC軸に平行な方向、X≧0.910では面内のC軸に垂直な方向へと偏光方向が変化することが分かった。最近では、六方晶半導体で擬立方晶近似が破綻することが報告された。本研究で検証を行ったところ、4%以上など非常に大きく歪んだ場合を除けば計算結果に殆ど差異が見られないことが分かった。 これらの研究と平行し、(3)、(4)の観点から、GaN結晶における表面再結合過程の研究を行った。分極の有無、表面/体積比の変化が表面再結合過程に与える影響を調査した結果、分極電場により表面のバンド状態は変化し、表面再結合過程に影響を与えることが分かった。
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