本研究では、近赤外光に対して高い量子効率を示す有機光電変換材料の開発を目指し、有機半導体-金属系電荷移動錯体薄膜の開発を試みた。フェナントロリン系化合物(Bathocuproine)と金属から成る電荷移動錯体では、Caとの組み合わせにより、半導体的な物性を示すことが示された。この電子構造を分析したところ、Bathocuporoine‐Ca間の強い界面相互作用により電荷移動量が増大し、半導体的物性の起源になることが明らかになった。一方、鉛フタロシアニンへのAg 添加による電荷移動錯体の形成に関しては、Agの微量添加時に光伝導度の向上が認められた。ただし、これを多量に添加すると、結晶性が乱れ電気特性が悪化することが判明した。高品質な電荷移動錯体を得るためには有機-金属界面相互作用の制御だけでなく結晶性の向上が不可欠であることが分かった。
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