研究概要 |
本研究では構成元素が地殻に豊富に存在し,安価で毒性のないCu_2ZnSnS_4(以下CZTS)を心臓部とする薄膜太陽電池を,超低コストで簡単に作製するために非真空下で作製する方法の開発を行った.CZTSはゾルゲル・硫化法で,CdS界面層は化学溶液堆積法で堆積した.本研究では,CZTSの組成比が物性に与える影響を硫黄含有量の観点から調べるため,硫化時の窒素希釈硫化水素ガスの硫化水素濃度依存性の調査を行った.また,CdS堆積条件の最適化,CZTS薄膜を構成する粒子の径の拡大を狙った赤外線加熱炉による急速加熱(Rapid Thermal Treatment=RTP)の検討を行った.硫化時の硫化水素濃度依存性を検討した結果,硫化水素が5から20%へと増加するに従いCZTSを構成する粒径の拡大が認められた.しかし,3%と濃度が低い場合でも粒径が20%硫化水素を用いたときと同程度に成長することがわかった.このことから硫化水素ガスが高濃度,低濃度では結晶粒の成長プロセスが異なることがわかった.CdS堆積条件の最適化から,CZTSにおいてもCdイオンを含むアルカリ溶液に事前に浸すpartial electrolyte treatment(PET)が有効であることがわかった.硫化水素濃度3%で結晶粒を大きくしたCZTSに対しPETを行い,素子を作製した結果,発電効率が従来より10%程度向上し2.23%となった.RTPの検討では硫化温度250℃で十分に硫黄が取り込まれていること,500℃10min程度でCZTSができることがわかった.
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