研究概要 |
本年度は研究実施計画に基づき,Fe-Cu-Nb-Si-BのFeの一部をSmに置換したSm-Fe-Cu-Nb-Si-B非晶質試料の作製と熱処理による析出相評価およびその磁気特性を評価した.Sm_χFe<73.5-χ>Cu_1Nb_3Si_<15.5>B_7にて,χ=0~10まで組成を変化させ,ロール速度を30~50m/sの間で変化させることで試料作製を行った,従来のFe-Cu-Nb-Si-B系薄帯における検討結果では,低応力で大きな異方性を得るには,As-castの状態で完全に非晶質状態であることが重要であった.作製したSm置換試料では,Sm置換量にもよるがロール速度が45m/s以上で完全に非晶質状態が得られることを確認した.示差走査熱量計や熱磁気特性による結晶化温度解析の結果,χ=0~10の置換範囲では,450~520℃付近が結晶化温度であることがわかった.この結果を踏まえ,450~650℃の範囲で温度を変化させ,30分昇温で30分保持の計1時間の真空熱処理を施し,X線解析および熱磁気特性から析出相を評価した.その結果,熱処理温度が500℃以下では,十分な結晶化は確認できなかった.550℃を超える比較的高い温度で熱処理を施した場合は,χ=0~4の置換範囲ではFe-Si相の析出が,χ>6ではFe-Si相以外の結晶性の磁性相が析出した.χ=4~6の範囲では,Fe-Si相とFe-Sm系化合物と考えられる磁性相の析出が確認されたため,χ=4~6付近を中心に磁気特性を評価した.550℃の熱処理では,As-castの状態と比較して大きな保磁力増加は確認されなかったが,650℃の熱処理では保磁力が大きく増加した.本年度の研究を通じ,Sm_χFe_<73.5-χ>Cu_1Nb_3Si_<15.5>B_7においてχ=4~6付近で550℃程度の熱処理を施すことで,優れた軟磁気特性を維持しつつFe-Si相とFe-Sm系化合物相を共析させることができる可能性が判明した.
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