研究概要 |
近年,ダイヤモンドに高濃度のボロン(B)をドーピングすると,超伝導を示すことが報告され,既存の超伝導理論ではうまく説明できないことから,物理的側面より大変注目を集めている.特に,転移温度TcがBドープ量とともに増加すること,すなわち電子ではなくホールが超伝導に寄与していそうなことが特徴的である.申請者は,レーザーアブレーション(PLD)法および同軸型アークプラズマ蒸着法によりホモエヒ。タキシャルダイヤモンド膜と粒径5nm以下のダイヤモンド微結晶から構成される超ナノ微結晶ダイヤモンド(UNCD)膜の研究を行ってきた.両手法とも主流のCVD法に比べ異端的ではあるが,非平衡性が大変強く,B高濃度ドープに関しては極めて有効である.これまでにダイヤモンドのホモェピ成長(PLD法)を実現し,UNCD膜においては異種基板上成長(PLD法,アークプラズマ蒸着法)を実現するとともに,Bドープを用いて,UNCDのp型化に成功している. 本研究ではまず,膜成長の再現性が良く得られているUNCD膜に着員した.UNCD膜の電気伝導度の値は,ボロンドープ量の増加とともに変化し,最高でアンドープ時に比べて,4倍ほど高い値を示した.Bのドープ量により,UNCDの電気伝導度を制御できることが分かった.熱起電力によりUNCDがp型化していることも確認した.今後は,高濃度ボロンドープUNCD薄膜の結合状態,電子状態に関し調査する.さらに現段階の高濃度UNCD薄膜について,転移温度T_Cの測定を試み,超伝導材料としての可能性を検討していく.
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