低炭素社会における液体水素冷却超伝導導体として、MgB_2超伝導線材による液体水素温度(20K)での運転可能な送電ケーブル応用を念頭に、多芯化等の大容量化や撚線加工に向けた最適断面構成や機械的特性の把握に努めて20kA級導体の設計に繋げることを目的に、平成21年度はMgB_2/Ta/Cu複合7芯及び19芯多芯線材の最適線材加工条件及び超伝導特性について検討を行った。 MgB_2多芯線の断面構成はMgB_2/Ta単芯線をフィラメントとして、Cu管に7本及び19本の単芯線を組み込んで加工試験を行った。フィラメント単芯線は六角形状に加工した方が異常変形による断線が抑制される事が分かった。これは六角形状にすることでフィラメントは最密充填され、均一な減面加工が可能になったためと考えられる。多芯線材の長尺加工条件として、加工率が80%を超えた加工工程では顕著な断線やソーセージング(フィラメントの異常変形)が観察される結果となった。80%の加工率を経た19芯線材を400℃の2h(Ar雰囲気)の焼鈍処理を行うことで、その後の減面加工で断線が見られなくなった。以上のことから、Ar雰囲気での焼鈍処理は長尺加工工程において重要な処理であることが分かった。次に、これら作製した線材の超伝導特性を測定するために、温度可変用の臨界電流測定プローブを設計・製作を行った。次年度はこのプローブを使用して温度-磁場-臨界電流(T-B-Ic特性)を測定し、20K付近での特性を明らかにする。
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