異種材料界面で発現するスピン機能の直接分析を実現するための新技術開発を行った。本年度は主に実験装置の製作および立ち上げ作業を実施した。まず、超高分解能スピン偏極走査電子顕微鏡(SEM)とパルスレーザー堆積(PLD)装置を接続し、両者の機能統合を図った。スピン検出感度を確保するためには、雰囲気から試料への吸着汚染を十分に低減させる必要がある。そのような高清浄環境を実現するため、排気能力や脱ガス機構の改良など真空性能の強化を行うことにより、接続状態にある装置内の全領域を極高真空に到達可能とした。この際、可動部を持たない真空排気ポンプを適所に配置することによって、分析の障害となる振動ノイズを許容範囲まで低減することにも成功した。これらにより、試料作製・搬送・分析の全プロセスを高清浄環境下で実施することが可能となった。 界面スピン秩序の発現領域は接合面から数ナノメートル程度と予想されているため、ナノ精度の接合形成技術が必要となる。そこで、PLD成膜用レーザーを材料ターゲットに収束させるレンズを高速・精密に位置制御するための機構を製作した。更に、基板温度その他の成膜パラメーターとリンクさせながらプログラム制御できるよう自動化し、複数ターゲットを用いた界面形成を連続かつ高精度に行うことを可能とした。これにより理想的な界面成長を実現するための機構がほぼ整った。原子層単位で厚みが制御された理想ヘテロ界面を形成する技術を確立するため、製作した装置を実際に用い、最適成膜条件を決定するための予備的実験を開始した。
|