研究概要 |
(1)化学溶液法により作製したPZT薄膜のSNDMによる非線形誘電率計測 PZT薄膜の非線形誘電率の組成依存性を調べるために,[Zr]:[Ti]比を0:100から80:20の範囲で変えたPZT薄膜を化学溶液法によって作製した.成膜条件の調整を行うことで,Pt/TiO_x/Ti/Si基板に対して,(111)優先配向のPZT薄膜を形成した.また得られたPZT薄膜について,良好なP-Eヒステリシス特性を示すことを確認した.次に,これらのPZT薄膜に関して走査型非線形誘電率顕微鏡(SNDM)を用いて非線形誘電率の計測を行った.しかしながら,組成を変えた時の非線形誘電率の変化に関して,比較を行うのに十分な計測の精度を現時点では得ることができなかった.そこで,計測上の問題点を整理し,強誘電体薄膜の非線形誘電率の定量的計測をより高精度に行うことができる手法に関して検討を行った. (2)非線形定数の動的測定法による非線形誘電率計測 前項で述べたとおり,SNDMを用いてPZT薄膜の非線形誘電率に関して,定量的な議論を行うことは現時点では困難であった.そこで,計測の精度を高めるために,別の手法として非線形定数の動的測定法なる計測法の導入を行った.この手法では,平行平板コンデンサ状に成形された強誘電体材料に電界を印加したときに生じるわずかな静電容量変化を,LC共振回路を用いることで高感度に検出することが可能である.本手法はもともとバルク状の結晶またはセラミックスに対して適用されてきたが,今回は新たに厚さ1μm程度以下の薄膜に対しても計測が行えるように,測定回路に改良を加え,その基礎動作確認を行った.
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