研究概要 |
本研究では,薄膜に代えて高品質超伝導バルクを用いることによって,高い耐電力を有する最高性能送信用超伝導フィルタを開発すること目的としている。最終的な超伝導送信用フィルタ特性の仕様と数値目標は,中心周波数:5GHz,帯域幅:100MHz,挿入損失:1dB以下,スカート特性:30dB/10MHz以上,耐電力:40W以上である。 本年度はまず,耐電力及び相互変調歪み(IMD)測定を行うための評価システムの構築を行った。本助成により購入したRF発信機を追加することによって測定システムが構築できた。また,システムのノイズレベルを低減するためにノッチフィルタの導入が有効であることを明らかにした。さらにこれまでにない超伝導2信号通過フィルタを提案しIMD測定システムの低ノイズ化に有効であることを初めて明らかにした。この超伝導2信号フィルタは本提案による超伝導バルクフィルタにより実現できた。また,3段リング共振器フィルタの耐電力特性を評価した結果,Gy系バルクフィルタが25W以上の耐電力特を持つことを実験的に初めて明らかにできた。これは,Dy系バルクに比べて約2.5倍の耐電力である。電磁界シミュレーション結果から,ディスク型フィルタはリング型に比べて約4倍の耐電力特性を示すことが予想されているので,3段Gdバルクディスク共振器フィルタは100W以上の耐電力を有することが予想できる。次に,周波数特性(スカート特性)の目標を達成するために,9段飛び越し結合型フィルタが必要であることがわかった。本年度は,その前段階として,2,3,4段フィルタの設計を終了できた。試作は2段フィルタの1次試作を終えたが,現在特性改善のための実験を行っている。
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