本研究は、柔軟な基板上への圧電厚膜の成膜プロセスを確立することにより、小型・軽量・柔軟な超音波診断デバイスを実現することにある。スパッタリングやゾルゲル法などの一般的手法では高温処理を必要とすることから、柔軟基板上への圧電厚膜の成膜はできない。そこで、200℃程度の比較的低温の水溶液反応を利用する水熱合成法を採用した。本年度は、柔軟性基板を検討と共に、短時間で厚膜化させるためのプロセスを提案した。 水熱合成法は、高いアルカリ溶液を用いるために、柔軟基板の種類が制限される。そこで、まず様々な柔軟性基板の耐アルカリ性を検討した後、予め基板に適切な処理を行うことにより、水熱合成法によってチタン酸ジルコン酸鉛薄膜が成膜できることを確認した。成膜された薄膜は柔軟であり、変形させても剥離などしないことから、今までの焼結薄膜とは異なる特性を有する。 また、従来研究されてきた水熱合成法においては、24時間程度の反応時間で2ミクロン程度の厚みにしかならず、超音波診断装置に応用するためには反応プロセスを数十回繰り返す必要があり、現実的ではない。そこで、本研究では、水熱合成法反応中に超音波照射をさせることにより反応促進させることとした。独自に開発した超音波アシスト水熱合成反応容器により、チタン基板上にチタン酸ジルコン酸鉛薄膜において、従来の5倍程度となる10ミクロン弱の厚膜を得ることに成功した。このように、超音波アシストが水得熱合成法反応プロセスに極めて有効となることを明らかにできたので、次年度は柔軟基板上に成膜する際に強力超音波照射を行い、その効果を確認する予定である。
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