本研究は、集積回路において非常に大きなチップ占有面積必要とするインダクタを用いることなく、無線通信用の各種回路ブロックを実現し、無線通信システムを小型することを目的としている。研究計画の最終年度にあたる平成23年度は、以下の項目について検討を行い、成果を得た。 第一に、アクティブインダクタの歪低減手法の拡張を行った。昨年度に提案したアクティブインダクタの歪低減手法は適用可能なアクティブインダクタが特定の回路構成に限定されていた。アクティブインダクタはその構成により動作周波数や実現可能なQ値が異なるため、より多くのアクティブインダクタに提案する歪低減手法を適用することが望まれる。そこで、提案した歪低減手法を拡張し、特定のアクティブインダクタだけでなくその他のアククティブインダクタについても歪低減手法を適用可能とした。アクティブインダクタの内部に存在するトランスコンダクタがMOSFET1個で構成されているアクティブインダクタについては既存の全てのアクティブインダクタで歪の低減に成功した。 第二に、これまでに提案した低歪アクティブインダクタを用いて無線通信システムを構成する様々な回路ブロックを構成した。無線通信システムは通常、低雑音増幅器、フィルタ、発振回路、ミキサなどから成る。平成23年度は、フィルタと発振回路についての検討を行い、いずれの回路ブロックについても提案した低歪アクティブインダクタを用いて実現することを確認した。既存のアクティブインダクタを用いた構成に比べより線形性に優れた特性を得ることが確認された。平成22年度に設計を行った低雑音増幅器と併せ、通常インダクタを用いて実現される多くの回路ブロックをインダクタを用いることなく実現することが出来た。これらを合わせた無線通信システムを現在設計中である。また、本研究課題で得られた成果は論文としてまとめられ、現在査読中である。
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