研究概要 |
平成21年度は,光脱離分光分析において空白の波長域であった50~120nmの波長域に重点を置いたレーザープラズマ光源の開発を行った. 一般的に入手し易い15種類の金属原子ターゲットを媒質として用いたレーザープラズマの発光のスペクトル形状,および発光強度を定量的に評価した.発光スペクトル形状は,原子番号の大きい金属を用いた方が,より連続的なスペクトルを有する傾向があることがわかった.これは原子番号の大きな原子ほど原子内の電子数が多いため価数の異なる様々な多価イオンからの再結合による発光や,様々な電子遷移による発光が重なるために広帯域な発光が得られたものだと考えられる.いくつかの例外はあるものの原子番号が25以上の金属ターゲットで,前述の波長域において連続的なスペクトルが得られることがわかった.また発光強度に関しても同様に,原子番号が比較的大きな金属ターゲットを用いた方が高い発光強度が得られ,光脱離分光分析用の光源として適していることがわかった. プラズマ状態を制御し極端紫外発光の最適化を行うためにダブルパルス照射法を試みた.一般的に固体ターゲットを用いた場合に生成されるプラズマの初期密度は固体密度と同程度(10^<23>cm^<-3>)であると考えられる.しかしながら,波長1064nmのNd:YAGレーザーを用いた場合の臨界密度は10^<21>cm^<-3>程度であるので,入射レーザーとプラズマの結合効率が良くない.そこでプレパルスをターゲットに照射しプレプラズマを生成し,このプレプラズマが膨張し最適なプラズマ密度となった時点で,時間遅延をつけたメインパルスを照射することでレーザーとプラズマのエネルギーカップリングを最適化することで,最大で2倍程度の発光強度の増加が観測された,よってダブルパルス照射によるプラズマ生成の能動的な制御は,発光強度の増加に有効な方法であることがわかった.
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