近年、高温などの過酷な環境において安定して動作する圧力センサーやスイッチが求められている。既存の金属を用いた圧力センサーやシリコンを用いたマイクロ電気機械システム(MEMS)センサーは、感度が悪い、温度に対して特性が大きく変化する、更に電力消費量が大きいなどの欠点がある。ダイヤモンドは、ワイドバンドギャップであり、高熱伝導率、更には熱的・機械的・化学的にも安定であるため、これらの欠点を克服できる材料であると考えられる。 平成22年度では、単結晶ダイヤモンドのナノ可動構造体カンチレバーおよびブリッジの作製に成功するとともに、全単結晶ダイヤモンドのナノマシンスイッチの開発に世界で初めて成功した。開発されたダイヤモンド・ナノマシンスイッチのリーク電流はかなり低く、消費電力は10pW以下である。また、表面固着がほとんど観測されず、高い再現性および高い信頼性を実現する。更に、ダイヤモンド・ナノマシンスイッチは高温環境(250℃)で安定に動作することも確認した。カンチレバー可動構造体のヤング率は1100GPaと測定され、ダイヤモンドバルク単結晶の値に近く、ギガヘルツの高速スイッチ操作を期待することができる。本研究成果は、ダイヤモンドの新しい機能性分野ナノ/マイクロマシンの基盤技術を確立するともに、化学、物理、および機械的センサへの展開を開拓することができる。
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